現代に響く物語 『源氏物語』 四十七帖「総角」

現代に響く物語 『源氏物語』 四十七帖「総角」
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源氏物語四十七帖「総角」の考察

『源氏物語』の第四十七帖「総角(あげまき)」は、宇治十帖の終盤に位置し、八の宮の一周忌を迎えた秋から冬にかけての出来事が描かれています。物語の焦点は、父を失った大君と中君の姉妹を取り巻く複雑な恋愛模様にあり、薫と匂宮(におうのみや)の思惑が絡み合う中で、物語は悲劇的な展開を迎えます。

「総角」という題名は、幼い子供が髪を結ぶ様式を指すと同時に、姫君たちの未熟な心境や複雑な人間関係の象徴でもあります。ここでは、現代語訳とともに「総角」の内容や登場人物の心理を詳細に考察し、彼らの選択がどのような結末をもたらすのかに焦点を当てていきます。

「総角」は『源氏物語』の第四十七帖で、薫24歳の秋から冬の物語です。物語は八の宮の一周忌法要から始まり、薫が八の宮の娘である大君に思いを告白しますが、大君は父の遺志を継いで独身を貫く決意をしており、薫を拒みます。大君を諦めた薫は、妹の中君を匂宮と結婚させる計画を立て、匂宮と中君は逢瀬を重ねるものの、母・明石の中宮の反対によって匂宮の訪れが途絶えます。これにより、姉妹は悲しみに暮れます。匂宮は宇治川での舟遊びや紅葉狩りで中君に会おうとしますが、人が集まりすぎて計画は失敗に終わり、さらに父帝から夕霧の六の君との結婚を決められてしまいます。この知らせに大君は心労から病に倒れ、薫の看病も虚しく、彼女は息を引き取ります。薫は深い悲しみに沈みますが、薫の喪の様子を知った明石の中宮は、中君を二条院に迎えることを認め、匂宮は中君を京へと引き取ることを決意します。「総角」は、姉妹の対照的な選択と、薫と匂宮の愛の違いが描かれ、運命の無常を象徴的に示しています

目次

現代語訳―「総角」のあらすじ

ここでは「総角」の物語の大筋となる箇所を取り出して訳していきます。

※一部を取り出した個人の意訳なので悪しからず。

現代語訳

八の宮の一周忌法要

物語は、八の宮の一周忌法要から始まります。薫は父・八の宮の遺志を大切にし、姫君たちにこまごまと心を配りながら法要を取り仕切ります。その夜、薫は大君の元を訪れ、意中を打ち明けますが、大君は父の遺志を守るため、独身を貫く決意を固めています。薫の切実な訴えにもかかわらず、大君は頑なに拒否し、二人は夜通し語り合って別れることになりました。

薫と中君の夜明け

その後、老女房の弁たちの計らいで薫は再び大君の寝所に入ることに成功しますが、大君は気配を察し、妹の中君を残して隠れてしまいます。薫は後に残された中君に気づき、彼女と夜明けまで語り明かします。この出来事をきっかけに、薫は中君との縁を考え始めます。

匂宮との逢瀬

薫は、大君の意思を尊重しつつ、中君を匂宮と結婚させようと考え、ひそかに匂宮を宇治に案内します。薫の手引きによって匂宮は中君と逢い、二人は親密さを深めますが、その後、匂宮は母である明石の中宮の反対により宇治を頻繁に訪れることが難しくなります。匂宮の訪れが途絶えたことを知り、中君と大君は深い悲しみに沈むこととなります。

匂宮の計画と大君の悲劇

十月、匂宮は中君に会うために宇治川での舟遊びや紅葉狩りを計画しますが、多くの人が集まりすぎてしまい、思い通りにはなりません。さらに、父帝が匂宮の遠出をやめさせるため、夕霧の六の君との結婚を決めてしまいます。これを知った大君は、心労から病に倒れ、薫の懸命な看病にもかかわらず、ついに息を引き取ります。その日は吹雪の夜であり、季節外れの豊明節会の日でした。

悲しみと結末

大君の死をきっかけに、薫は深い悲しみに沈み、宇治に籠って喪に服します。薫の喪の様子を人伝てに聞いた明石の中宮は、「これほど深く想われる女性の妹なら、匂宮が通うのも無理はない」と考え直し、匂宮に中君を二条院へ妻として迎えることを認めます。こうして、匂宮は中君を京の二条院に引き取ることを決意し、「総角」の物語は幕を閉じます。

「総角」の象徴と登場人物の心理

「総角」が示す象徴的な意味

「総角」という題名は、子供の髪型を意味しますが、この巻では姫君たちの心の未熟さや、複雑に絡み合う人間関係を象徴しています。特に、八の宮の死後、父の遺志を守るために独身を貫こうとする大君と、薫や匂宮の思いに揺れる中君の姿が、運命に翻弄される未成熟な存在として描かれています。

薫と匂宮の対比

「総角」では、薫と匂宮の対比が明確に描かれています。薫は穏やかな性格であり、姫君たちを見守りながら慎重に行動しますが、その思いが報われることはありません。一方、匂宮は情熱的で、行動力に富み、自らの欲望に忠実な人物として描かれています。彼の熱心さが中君を動かす一方で、母・明石の中宮の強い反対が彼の行動を制限します。

大君の決意と中君の選択

大君は父の遺志を守り、宇治の主として独身を貫く決意を固めます。彼女のこの決断が、物語全体において悲劇的な運命の象徴となっています。一方で、中君は姉の決意と自分の気持ちの間で揺れ動き、最終的には匂宮との結婚を選びます。この二人の姉妹の対照的な運命が、「総角」のテーマを深めています。

人間関係の絡み合いと運命の無常

「総角」では、登場人物たちが互いに強い感情を抱きながらも、その思いがすれ違い、運命に翻弄される様子が描かれています。特に、大君と中君の選択の違いが、物語全体の運命を決定づける重要な要素となっています。薫と匂宮の異なる愛の形、そして八の宮の遺志が姫君たちの人生にどのように影響を与えたのかが丁寧に描かれています。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

こちらの内容が興味や知識の一助となると幸いです。またお会いできることを楽しみにしております。

現代に響く物語 『源氏物語』 四十七帖「総角」

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